第4章 涼風

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******* 次の日の夜、葉月の分のヘルメットをシートに着けて、大学へ向かった。 七時じゃ会場に着く前に、花火大会が始まってしまうじゃねぇか。 そう思いながら、門に着くと葉月が構内から手を振って颯を呼ぶ。 「高村君、こっち、こっち。」 近づいて、バイクのエンジンを切る。 「花火見に行くんじゃねえのか?」 「はい。だから、学校で見るんですよ。」 いつもの場所にバイクを置くと、葉月のあとをついて行く。 たどり着いた所は、葉月のゼミの教室がある棟の屋上だった。 「へぇ、こんなとこ、入れんのかぁ。」 「鍵が壊れてるんですよ。教授達も知らないし、誰もこんな所来る人もいないし。」 「ここから、よく見えるんですよ。」 葉月が立った場所の向こう側の空に、パッと花火が上がる。 だいぶ遅れて、ドンと小さく音が聞こえた。 「あ、始まりましたね。」 遠くから眺める花火は、小さくて御殿まりのように可愛らしかった。 葉月は、時折、あっとか、わぁとか、声をあげて嬉しそうに眺めている。 「ほんと、花火って大好き。綺麗だなぁ。」 うっとり、眺めながら葉月が呟く。 柵にもたれ掛かりながら一緒に見ていた颯が応える。 「そんなに、好きなら、会場まで行って見りゃいいだろ。」 「一度、会場まで行ったことはあるんです。でも、すごい人混みで、  くじけて帰って来ちゃったんですよね。」 「いいんです。私は、ここから、ゆっくり見ている方が・・・」 「そんな最初から諦めてたんじゃ、手に入るもんの入らねぇ。案外、花火の真下に絶好の穴場って、あるもんだぜ。」 颯は、今日葉月を連れて行くつもりだった場所を思い浮かべながら、 ぶっきらぼうに呟く。 「・・・・」 葉月が下を向いて微笑んだように見えた。 行く気があるなら、オレが連れてってやる。 そう言いかけて、言葉を飲み込んだ。 顔を上げたたしぎの大きな瞳が濡れているように見えた。 遠くの花火が、瞳に映っている。 そのまま、何も言えなくなって、颯は遠くの花火に目をやった。
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