25人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
靴を履いて、振り返る。
「・・・じゃあ。」
颯は葉月の肩をつかんだ。
「礼なら、今してけよ。」
昨日から、溜まっていたイライラをぶつけるように、
葉月の唇を塞いだ。
頭の奥で、昨夜の葉月の感触がチカチカと甦る。
乾いたばかりの髪をくしゃくしゃにして、強引に舌を差し入れた。
「・・・んっ。」
葉月の喘ぎに、急に気が咎める。
押さえていた手の力を抜くと、唇を少し離した。
突き飛ばされるかと、身構えようとした瞬間、
すっと葉月の腕が颯の首に廻された。
やさしく大切なものにふれるような口づけだった。
確かに、葉月の方から近づいてきた。
「ごめんね。」
掠れたような声で、つぶやいて、手を解く。
下を向いたまま、颯を見ようともせずに、
ドアを開け、出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!