第1章 東風 ~彼女は煙草の香り~

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靴を履いて、振り返る。 「・・・じゃあ。」 颯は葉月の肩をつかんだ。 「礼なら、今してけよ。」 昨日から、溜まっていたイライラをぶつけるように、 葉月の唇を塞いだ。 頭の奥で、昨夜の葉月の感触がチカチカと甦る。 乾いたばかりの髪をくしゃくしゃにして、強引に舌を差し入れた。 「・・・んっ。」 葉月の喘ぎに、急に気が咎める。 押さえていた手の力を抜くと、唇を少し離した。 突き飛ばされるかと、身構えようとした瞬間、 すっと葉月の腕が颯の首に廻された。 やさしく大切なものにふれるような口づけだった。 確かに、葉月の方から近づいてきた。 「ごめんね。」 掠れたような声で、つぶやいて、手を解く。 下を向いたまま、颯を見ようともせずに、 ドアを開け、出て行った。
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