第一章 滅亡への交響曲

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第一章 滅亡への交響曲

すべての生命が海から生まれたのはもはや今日の定説である。地表の7割を占めるその海はもはやあるのが当たり前であり、今や怪獣などという存在を信じる大人はほとんどいないだろう。そうそのはずだった。あの日までは・・・・・・・・・・・・・ いつからだろう。死にゆく者を追悼しなくなったのは。いつからだろう、おわりなき絶望的戦いを繰り広げる中で生者が死者を羨むようになったのは、そしてそんな時代でも人類内部ではこの戦争の「後」の覇権を巡って暗躍する人がいる。もはや人類に明日があるのかさえわからないのに ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ 2040年初頭、突如として人類の前に「深海棲艦」が出現。瞬く間に勢力を広げていった。大国間のパワーゲームで当初動きの鈍かった人類をあざ笑うかのように制海権を急速に奪っていくと、気付いた時には人類はすでに事態収束の緒を見失っていたのだ。 そう、そんな時代に僕は生まれてきた。すでに深海棲艦によるシーレーンの破壊は苛烈をきわめ、残された僅かな土地をめぐり人類同士の争いさえ生まれてきたのだ。食料自給率の低下の激しい日本ではそれも過酷であり、輸出産業が立ちゆかなくなったこともありかつてのバブル崩壊が可愛く見えるほどの、それこそ大不況と言える状況に突入していた。最も海外では1食のために殺人さえ起きていたから、それと比べれば十分治安は良かったのだろうが、、、それでも暴動はあったし、最も安定していたと僕らからは呼ばれる2010年代~2030年台に比べ致命的なほど治安は悪化していた。そんな社会状況では子供を産もうという大人は減っていたし、それはすなわち労働人口の減少という問題をもたらした。 それだけで終わればまだ救いはあったのかもしれない 「深海棲艦」と名のついていただけあって当時は艦艇型しか知られていなかった。それだけにあの禍々しい飛行物体が首都上空を飛んでいた時、ほとんどの人が当初意味がわからなかったし、対処がほんの少しだけ遅れてしまった。後に大戦の超重爆と酷似していたためつけられた深海棲猫重爆撃機「B29スーパーキャットフォートレス」はおよそ500機が侵入。文字通り死に体だった日本にとどめを刺した。
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