第一章 滅亡への交響曲

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さて、そんな組織の中でも、さらなる武装をし、弾道ミサイルという初撃で全てが決まると言ってもいい現代戦において憲法のために有効な反撃手段を持たない自衛隊の代わりに、先制攻撃を敵組織にかけることができる小規模特殊部隊を作る計画がもちあがった。それが特務作戦群隠密実働作戦大隊(CPOB:covert production operations battalion)である。今となってはその部隊をあったことすら知らない人もいるだろうが、当初それは海上自衛隊内部に設置された極秘部隊である。少数精鋭のヘリコプター部隊を母艦より発進させCPOBを降下させ、先制攻撃でミサイル基地を破壊する。無論このような部隊は影の存在であり、日の目を見ることはなかった。しかし、僕はそこに一度夢を見た。不安定なバランスを持つ自衛隊を我々が支えるのだと、真の意味で日本を守っていくのだと誇りを持っていた。 だが実際はそう甘くなかった。いや、発足した事自体が奇跡だったのだろう。結局軍の専横と暴走を危惧する背広組によってこの部隊は解体され、その職場にあった者達は皆閑職にまわされた。特に前の職場とは関連のない職場に送り込まれるのが、そうした処分の実態であり、僕は一度手に入れた翼をもがれてしまったような喪失感になやまされた。それは、のちに近衛艦隊司令官となったとき自らの固有艤装が航空戦力とアウトレンジ攻撃に特化した主砲火力を優先的に持っていたことと関係するのだろう。近衛艦隊司令官に任命されたのも、日陰者は日陰にまとめておいたほうが万が一の時、「事故」や「病気」で処理しやすいという考えであろうし、彼はそうした暗い事情にあまりにも心当たりがあった。いや、ある意味彼こそがその執行役だったのだから・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ 当初陸上自衛隊にあった彼はその適性から情報局の訓練部隊に配属されると、父親や娘の命を脅される形で、訓練で同級生と実弾入り銃口を向けあう戦闘をさせられ、薬物耐性訓練と称して多種多様な薬物を投与されるような非人道的扱いも平気でされた。無論こんなことは対外的に知られてはまずいものであり、脱落したものは機密保持のため記憶を消す「薬」をのまされるが、そんなものを飲んだら糞尿垂れ流しの廃人になると言うのは公然の秘密であった。
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