第1章

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私の肩を掴んで、強引に母に立たされ、真横からいろいろ言われていたけれど、よく覚えていないまま、翌日。 「…………」 母が同じ布団で寝ていた。悲鳴をあげなかったのは二日酔いと異様な喉の渇きのせいだ。そうじゃなかったら今すぐ母を布団から蹴り出している。とにかく最悪の目覚めだ。なにより、ぐーすかと幸せそうな寝顔がうっとうしい。 「なんで二十歳になって、母親と添い寝しなきゃなんないのよ……うえっ、気持ち悪い」 冷蔵庫に入れておいた、ミネラルウォーターを一気に飲み干して椅子に座る。二度寝したかったけれど、この家にある布団は母が占拠して寝れない。母と添い寝だ。ワーイなんてなれるわけがない。 近すぎるからわからないことが多いと言うけれど、遠く離れてみてわかることがあると言うけれど、私にとって母はいつまでたってもわからない。 親子だから? 子供だから? 自立できていないから? いろいろグルグルと頭の中をかき混ぜていくけれど、答えは出てこない。二十歳になったら大人のイメージは、子供の頃に抱いたものだが、二十歳になっても私は大人になれたかすらわからない。 子供の頃は、知らないことを知りたいと思い、大人の年齢になると知ったことがわからくなる。間違いなのか、正解なのか。 結局、わからないことだらけで額に置いたミネラルウォーターがとても冷たくて気持ちいいということだけわかった。 母は午後まで私の布団を占拠した。仕事が休みだったからいいけれど、この置物、どうしようと思っていた矢先に冬眠から目覚めた熊のようにいきなり起き上がった母はいつものように、パタパタとスリッパを鳴らして、カップヌードルにお湯を注いでいく。 「いや、それ、私のだし!!」 「うるさいわね。たくさんあるんだから一個くらいいいでしょ。ほら、あんたも食べな」 「ここ私の家なんだけど」 「自炊もできないアホに自分の家なんて百年早い。せいぜい犬小屋ね。庭先に置いてあるやつ、中にいるののはワンワン、吠えるだけの野良犬」 「私って言いたいわけか、このクソババア!!」 「やんのか、このクソムスメ!!」 母は履いていたスリッパをさっと持つと私の額、めがけて振り下ろしてきた。私はとっさに丸めた雑誌で応戦する。パコッ!! と間抜けな音が響き、母はもう一つのスリッパを片手に装備すると、思いっきり私の脇腹に突き刺した。 「おうっ!?」
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