標的─1

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  「ありがと。 もう戻って良いよ。 そいつらは任せるから」  よほどおかしかったのか、 白衣の男は眼鏡を外すと、 流れた涙を拭った。  少年達は彼に一礼して、 男達を担いだまま引き上げる。 それを見送って二人だけになると、 さて……と一つ呟いた。 眼鏡をかけ直した白衣の男は、 それから女に向き直る。 急に真面目な表情を浮かべた彼の口元は、 それでいてどこか柔らかな笑みを形作っていた。 「それで……話って何?」  話がある。  そう連絡があったのは昨夜の事で、 何事かと彼は思った。 彼女とは旧知の仲で、 改まって話す事など特に無いのに。
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