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男が切り出した途端、
女の表情が険しい物へと変わった。
何か考えているのか、
男の様子を伺うように無言のまま見ている。
躊躇うかのように口を僅かに開いたかと思えば、
すぐに閉じる。
一度足元に視線を落とし、
そのまま話し始めた。
「あんまり喜ばしくない情報、
持ってきたわよ」
「君の情報は確かだし俺も一目置いている。
……きっと本当に喜ばしくない情報なんだろうね。
でも確かな分、
君から買うと高いからなぁ……」
「昔馴染みだからね、
タダで良いわ。
アンタには世話になったし」
「案外義理堅いんだね」
ククッ、
と彼は笑う。
そんな彼を、
情報屋の女は険しい表情のまま見つめ、
ゆっくりと言葉を紡いだ。
「博士が亡くなったそうよ」
男の表情が一瞬にして凍りつく。
動揺を隠さず、
揺らぐ瞳で女を見やった。
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