標的─1

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   好き好んでこの街に来る者などいない──それは白衣を身に纏った彼も同じだった。  茶色い短髪を風に揺らして、 白衣のポケットに両手を突っ込んだままそこに佇む青年。 眼鏡の奥の瞳が、 鬱陶しそうに正面を見据えた。 「どいてくれる? 邪魔なんだけど」 「有り金全部置いてけよ。 そしたらどいてやるぜ?」  汚い笑い声と共に、 ニィッと口の端を釣り上げる男。 対峙する白衣の男は、 自分の足元に目を落として深々と溜め息をついた。  口で言っても分かる連中じゃないか、 と思い、 再び正面を見やる。
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