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好き好んでこの街に来る者などいない──それは白衣を身に纏った彼も同じだった。
茶色い短髪を風に揺らして、
白衣のポケットに両手を突っ込んだままそこに佇む青年。
眼鏡の奥の瞳が、
鬱陶しそうに正面を見据えた。
「どいてくれる? 邪魔なんだけど」
「有り金全部置いてけよ。
そしたらどいてやるぜ?」
汚い笑い声と共に、
ニィッと口の端を釣り上げる男。
対峙する白衣の男は、
自分の足元に目を落として深々と溜め息をついた。
口で言っても分かる連中じゃないか、
と思い、
再び正面を見やる。
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