第1章

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「本当、残念ね」 定食屋の日替わり定食のハンバーグをほうばりながら、同じ会社の祠堂 斗貴子が憐みの目で私を見る。 「何が?」 これまた同じハンバーグをほうばりながらそう返すと『残念』ともう一度言われてしまった。 「見てくれが良いだけにその中身、本当に残念だわ」 見てくれって・・・どっちかって言うと斗貴子の方が見てくれは私の何十倍も良いように思うんだけど。 綺麗に巻かれた髪はキューティクルたっぷりでツヤツヤと輝いている。 少しきつめの目元も斗貴子のクールビューティーさに拍車をかけている。 「普通だと思うんだけど?」 「何が普通よ。 普通の女子はイケメンになら何をされても良いなんて事言わないし思わないから」 「え~~~絶対思ってるって。妄想全開だってば!」 「妄想するより実践の方が良いに決まってるじゃない」 「リア充発言はんたーーーい」 「見てくれいいんだから、さっさと彼氏作っちゃえばいいのに」 「イケメンが良いです」 「じゃあ告白したら?殿堂入りのイケメンに」 「それは・・・」 ハードルが高すぎると言うか・・・ 殿堂入りは観賞用って感じで。仮に万が一告白するなら西島さんの方にするかなぁ。 ああ、でもやっぱりイケメンは観賞用だな。 あとたまに弄られるくらいが丁度いい。 観賞用だと言うと『残念だ』とまた言われる。 毎度同じことを言われるが、まぁこればっかりは仕方がない。 「いくらイケメンでも性格悪いのとかごめんだけど」 斗貴子が首を振る。 「何言ってんの!イケメンだから許される事なんだよ! ブサメンで性格悪いとか最悪でしょ! イケメンだからこそ性根が悪いのも許されるってものよ!」 「力説されても困るんだけど」 「ああ、もう一度でいいから加藤さんになじられたい」 「残念通り越して、馬鹿だね」 「そっかな?でも加藤さんになじられたらもう目標が無くなっちゃうから生きる希望がなくなるかも」 「ああ、もう黙って。アンタの話聞いてるとこっちがおかしくなる。 それにそういう事他の人に言っちゃダメだよ」 「分かってるってば。斗貴子にしか話さないし」 会社に入ってから仲良くなった斗貴子。 イケメンのみならず美女に弱い私はすぐに斗貴子に懐いた。 斗貴子は最初変な生き物に気に入られたと思ったらしいけど。
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