第1章

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「あと、この数字のろうそくも」 母親の誕生日ケーキを『Bonheru』に予約していた私は、仕事が終わってすぐにお店へと向かった。 今日も素敵です。店長! ギャルソンの格好をした菅沼さんに見とつつカウンターの上に置いてある4と5の数字のろうそくを指差す。 ああ、この甘い香り。たまらない。 よだれが垂れそうなのをなんとか我慢して、店長からケーキを受け取る。 ひんやりとした指先が触れて、ドキンと胸が高鳴る。 「いつもありがとうございます」 「こちらこそ。いつも美味しいケーキありがとうございます」 丁度お客さんが途切れた事もあって菅沼さんが話しかけてくれた。 「美湖ちゃんの誕生日ももうすぐですね」 「覚えててくれたんですか!」 「もちろん。今年もいつものケーキでいいのかな?」 「はい!」 「あれ?今度25歳になるのかな?」 「シーー!駄目ですよ!年齢言ったら!」 誰も興味がないだろうが、辺りを見渡して誰も聞いてないか確認する。 「結婚はしないの?」 「あーーー。その話題になっちゃいますよね。 残念ながら、お相手が」 「美湖ちゃん可愛いのに。 おじさんがあと10若かったら立候補するんだけどなぁ」 「もう!何言ってるんですか!綺麗な奥さんと可愛い坊ちゃんが居るのに」 お店の奥に飾ってある家族写真。 イケメンにはやっぱり美女ですよ!そして可愛い子供!ああ!素敵すぎる。 「店長の所みたいに素敵な家庭を築きたいんですけどね」 「美湖ちゃんなら大丈夫だよ」 「そうだといいんですけど」 しょんぼりしながらお店を出る。 美女ならイケメンと結婚を夢見るけれど、私みたいに普通はイケメンを鑑賞するのが精いっぱい。身の丈にあった男の人と結婚するんだろうけど。 でもイケメンに目が行って全然恋愛対象になりそうな人に目が行かない! こんなんじゃ結婚どころか恋愛すら危うい。 頑張ろう・・・
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