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遮るものなど何もない浜辺で大した効果なんかないと分かってはいるが、他の集団から少しでも離れさせるために俺の反対側へ移動を促した。
みどりは意味が分かったんだか分かっていないんだか、苦笑しながら素直に従って俺の隣に腰を下ろす。
「気持ちいーね」
「ああ、だな。……また来るか」
「来たい。でも、他のこともやってみたい」
「他のって?」
「んー……、色々」
「はは、何だそれ」
その、『色々』とやらを。
俺と一緒に、と言ってるんだろうか。
もう少しストレートになれよ、と思う。
俺から言ったら、意味がないだろう。
さっさと吐け、みどり。
潮風がゆらりとみどりの髪を揺らす。
その下の背中は、髪から落ちる水滴で半乾きだ。
夕陽よりもそれに見惚れていたかった。
ぼうっと見上げていたそれが、ゆっくりと近付いてくる。
「馬鹿お前、砂付くぞ」
一緒に隣に寝そべろうとしているのだと気付いて、慌てて手を伸ばした。
支えて止めようとしたその手に、遠慮なく体重がかかる。
「いいよ、どうせシャワー浴びるもん」
「――ッ」
どうして、こう。
みどりが言うと、いちいち艶めかしく聞こえるんだ。
当たり前のように俺の腕を枕にして目を閉じたのは、こいつなりの感情表現なのだろうか。
それとも、こなれた駆け引きの一種なのか。
……まさか天然ってことは、ないんだろうが。
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