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「まさかこんなに消耗するとは思ってなかった。体力には自信あるのに……」
「水中の疲れは後から来るからな。気付かないで、初めてなのにはしゃぎ過ぎたんだ」
「初めてだからだよぅ」
結局みどりは、着替えて飯を食った後もくたりとしたままだった。
不満を訴える彼女を強引に助手席に押し込んで、帰りは俺が運転をすることに。
疲れているところを無理させたくないし、居眠り運転でもされてはたまらない。
「私の車なのに」
といつまでも駄々をこねるみどりに苦笑した。
年代物と言ってもいい古い車なのに中も外も綺麗だし、良く整備もされているようだ。
自分の車に対する愛着もあるんだろう。
「そんなに嫌? 自分の車のハンドル他人に握られるの」
「そういうわけじゃ……信用してるし」
「なら大人しくしてろ」
『他人』とひとくくりに言ったのに、『信用してる』という答えは俺個人に対する評価だと思うと気分は良かった。
だがみどりは不服そうに口を尖らせて、落ち込んでいるようにも見える。
「なんだよ。そんなに運転したかったのか」
「――たまには役に立ちたかったのよ。いつも助手席って、なんかお荷物みたいで」
その言葉に、一瞬ポカンとしてしまった。
そんな風に考えてたなんて、人に甘えるのが下手すぎて――、なんなんだこいつは。
可愛すぎる。
「安心しろ、俺も運転は嫌いじゃないから」
だが笑いながら言ったのが気に喰わなかったのか、みどりは「でもこの車、マニュアルだよ?」などとほざいた。
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