第1章

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一学期が始まった直後に、二泊三日の校外学習が行われた 山奥の寮で寝食を共にして、クラス全員と親睦を深めようという狙いだ でも、理由なんかどうでも良かった 「ぼくだって圭介が好き、なんだよ」 鏡を見れば、チコに似た繊細な顔が映る だけど違う どんなに似ていても、ぼくは男だ ぼくには胸も無いし、余計な物が付いてる 男であるぼくに、圭介は一生振り向いてくれない 家でチコと圭介の仲睦まじい姿を見るのは、苦しかった 圭介の笑顔も、優しく頬に触れる手も、低く甘い声も全部! ぼくのものじゃなく、チコのもの 「もう分かったから、これ以上見せ付けないでくれ!」 絶望にひび割れたぼくの心は、限界だった 友人の振りをするのも、兄の顔を演じるのも ーーーッ、限界だった 校外学習初日は野外でぼく以外の男子は弓道、女子はアーチェリー 近隣の大学生から指導を受け、的の前に立つ彼らを横目に 「ほら、弓だけで良いから弦に当ててみろ」 力のないぼくは、マンツーマンで指導を受けていた 「弱いなぁ、お前。本当は女ってんじゃねえだろうな」 響先生の手が、体操服の上からぼくの肩を撫で、胸を撫で回す 「んぁ・・・・・・・・・」 ・・・・・・・・・圭介 チコの胸を弄る圭介の手、圭介の唇、圭介の欲に濡れた目 欲しくて、欲しくて 頭が、変になりそうだ 「・・・・・・あっちの倉庫で、休憩するか?」 響先生の胸に頬を当て、頷いた
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