第1章

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「ただいま」 1才しか離れていない天使の妹 「お兄ちゃん!」 ぼくが帰宅してすぐ、階段を駆け下りてきた 可愛いなあ、チコの目が潤んでる 昨日、顔も見ずに外泊したから、寂しい思いをさせたのかも 友樹に頼んでチコの好物のプリン、作って貰おうかな 「お兄ちゃんなんか、大っ嫌い!!」 大きな瞳から涙がぽろぽろ、白く透き通った頬を伝い落ちていく 可愛い妹に号泣されたぼくは 「な、な、な、何でー!?」 パニックに陥ってしまった ミルクと砂糖をたっぷり入れたココアを二人分、テーブルに置いた友樹が 黙ってぼくの肩を抱き寄せてくれる ぼくたち兄妹は、近所でも有名なシスコンとブラコン 学校に行くのも、風呂に入るのも、いつも二人一緒だった 自分の感情は後回しにして、大事にしていた妹が 「もやもやするの。一日中もやもやして目を閉じても、眠れないの」 恵理の胸に抱かれ安心した顔で、ポツリポツリと語り出す 付き合いだして、一年経つけれど 彼の優しさは、何も変わらない 昨日だって「会いたい」メールを見て心配してくれた彼は 部活を休んで、家まで来てくれた 「でもね? 触ってくれないの」 半年前から、最後まで抱いてくれなくなり 「抱いて」 お願いするたび、困ったように笑う 好きな人の辛そうな顔を見たくなくて、何も言えなくなった 圭介の馬鹿・・・・・・っ、態度を変えるくらいなら、大事な妹に手を出すなよ 「分かってたの。圭介が好きなのは、お兄ちゃ「チコ!」・・・・・・」 鼻頭を赤くしたチコが、鋭い声を発したぼくを驚いた顔で見る 今更、無理なんだ 圭介を好きだった頃のぼくには、もう戻れない 「ぼくにはね、付き合ってる人が居るんだよ」
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