第1章

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失恋して一週間目の日曜日 ぼく鈴木真琴は、最悪の誕生日を迎えた 中学入学と同時に、同じクラスのアイツに恋をした それを恋だと気付いたのは、振られた瞬間 「マコ(お兄ちゃん)、誕生日おめでとう。これ、プレゼント」 妹のチコは、長いまつ毛をパチパチさせながら 「あたし、お兄ちゃんの妹で良かった。圭介と恋人になれたのも、お兄ちゃんと間違われたからだもん」 チコぉ、ぼくはお前の暢気さが心配だ そりゃあ、兄妹だからぼくらは似てるさ でもな? ぼくの髪は短いし、ワンピースも着ていない ソバージュの長い髪を揺らし、スカートの裾を翻し歩くお前とぼくを 本気で間違える人間がいたら、驚きだ 「ありがとう。何これ? デカいな」 「えヘヘ。ディズニーランドのお土産、プーさんのぬいぐるみだよ。圭介と初デートだったんだあ」 あー、そう ぼくの気持ちを二人とも知らない。とはいえ キっツいなあ 大事な妹と、好きだった男が手を繋いでキスする姿を見るのは 「ぼく受験勉強するから、部屋戻るね。圭介はゆっくりしてって」 恋愛する余裕のある圭介と、ギリギリまで勉強するぼく 頑張ってんのに、国際学園高等部落ちたら洒落にならない 部屋で、プレゼントの包装紙を剥ぎ取った ぼくのこと笑ってんの? 平和な顔をしたプーさんを宙に浮かせ 思い切り、グーで殴った あーあ、勉強しよ
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