第2章

3/18

434人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「なってない!」 「へえ? あんた凄いねえ。真琴。反対するなら、この姉さんより成績上げてからにしな」 う・・・・・・・・・っ、そ、それは 全国模試三位の恵里は、当然学年一位 対するぼくは赤点にならないギリギリの成績、劣等生だ 予告なしに、家庭教師宣言をした恵里を睨むことしか出来ないぼくに見切りをつけ 母の視線は恵里へと、戻ってしまった 「姉さん。智恵子を任せたよ」 「はい! お母様」 水原家の絶対君主、母の意見を覆すのは無理 勉強を恵里に教えて貰うのは、百歩譲って許すとして 問題は・・・・・・、圭介 「分かった。話し合ってみる」 不承不承ながらも、圭介と話し合ってみると言ったチコ 圭介との関係がはっきりするまで、チコを口説きはしない 「信じなさい。友達を裏切るような真似、絶対にしないから」 誓ってくれた恵里 その恵里に、屋上に行こうと誘われた 「それより、真琴ちゃんはどうなのよ。まだ好きなんでしょ? 彼のこと」 授業開始のチャイムを聞き流し アスファルトに寝転んで、ぼうっと空を眺めるぼくを 上から覗き込んでくる彼女の目が「心配」なのだと、語りかけてきた 「チコと圭介が付き合いはじめの頃はさ、夜、寝るのが怖かった。夢を見たくなかったんだ」 圭介の欲情した瞳、チコの胸を触る手、濡れた唇 現実の世界の風景を見せ付けられるより、辛かったのは 過去の何気ない日常を、夢に見てしまうこと 二人で見た夕焼け空 早弁した圭介のお腹が鳴って、笑いながら半分に千切ったパン 雪の舞う寒い日に、くしゃみしながらぼくの首に巻いてくれたマフラー 遠く霞んでいく幸せだった日常を、チコと圭介はこれから歩んでいく 夢をみるたびに思い知らされるから、寝るのが怖かった
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

434人が本棚に入れています
本棚に追加