第2章

10/18

434人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
ここは総合体育館の中央 右にアリーナ、左に武道館、前に弓道場 螺旋階段を下れば、プール、トレーニングルームと多彩な施設がある  本日、某アイドルのコンサートもあるらしく テントの下に長机とパン箱を並べただけの販売所でも、人の波は途切れない 「ご苦労さん、残り物で悪いけどパンを選んでいいよ。後は生徒会でやるから」 愛美の恋人、早漏鈴木先輩が空になったパン箱を片付けながら、ぼくと愛美に言った このパンが労働報酬? だったら遠慮なく頂きます 「あー、残念。コロッケパンが残ってないや」 数個しか残ってないパン箱には、食べてみたかったパンがない 「了解。来週はコロッケパンの割合、増やしておくよ」 「は?」 「ん? 来週も手伝ってくれるんだろう」 眼鏡を押し上げた鈴木先輩は、愛美に期待の眼差しを向けた 「えー、やだ。手が足りないなら、ボランティアでも頼めば?」 「報酬がパンじゃ誰も来ない。それに、こんなにスムーズに売れたのは初めてなんだ」 あー、分かる むさ苦しい男の売るパンは、欲しくないかも 風紀には、いい男がいるんだけどね 友樹のことだけどさ 「だったら、女装して頑張ってごらんなさい」 ひらひら手を振って、生徒会に背をむけ 愛美とニ人でパイプ椅子に座り、テント下で食べ始めた時 弓道場の扉が開いて、人が出てきた 「真琴ちゃん?」 訝しげな愛美の問い掛けに、返事が出来ない 会いたくて、会いたくなかった人 素知らぬ顔をしてる間に、通り過ぎてくれないだろうか
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

434人が本棚に入れています
本棚に追加