第2章

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「パン少な! しかも、男の売り子かよ。ついてねぇ」 残念そうな声が聞こえる中、凛とした空気につつまれた男 圭介の視線は、まっすぐぼくを捉え 眩しそうに目を細め、笑った その不意打ちすぎる笑顔に、きゅうっと胸が締まった 「よお、マコ。一週間ぶり」 ぼくの耳は、圭介の声に敏感に反応する 胸をドキドキさせ 彼の足音、呼吸全てを追いかけてしまう これはもう、条件反射だとしか言いようがない そして、これさえなければ ぼくはあんなにも、苦しまなかった筈 「うん。久し振り」 「マコに会えると思わなかった。少し、話せるか?」 ぼくに否などない 食べかけのカレーパンを袋にもどし、二人で話せそうな日陰を探した 「少しの時間でいいなら、ここで話せばいいわ」 むずかしい顔でぼくと圭介を見比べていた愛美は、頷く圭介を確認して 「真琴ちゃん。私、パンの売り子手伝ってくるから」 パッと立ち上がり、去って行った ありがとう、愛美 「団体戦の選手?」 小中9年間続けたサッカーを辞め、弓道部に入部したと聞いた時は驚いたけど 「一年生で選手なんて凄い。おめでとう」 圭介が照れた時にする癖 少し俯いて、右手で耳たぶを触る仕草をしながら言った 「ありがとう。マコに言われるのが一番嬉しい」 ズキューン! はにかんだ笑顔の圭介に、胸を撃ち抜かれた このド天然のタラシめ 何の気なしに「一番」言われ喜ぶぼくの身にも、なりやがれ! 「俺さ、マコの校外学習が終わった日。高校まで迎えに行ったんだ。無性にマコに会いたくなって」
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