第3章

4/20

434人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
微笑んだ瞬間・・・・・・ 驚愕に目を見開いたチコに、背を向けた きっと、酷い顔をしてる 「マコ!」 圭介に見られたくない。嫉妬に身を焦がす醜い表情を 一刻も早く この場から消えてしまわなければ その一心で 呼び止める声を無視して、家から走り出た ぼくの妄想の中で、対等だったチコとぼく 馬鹿だなぁ 天使の妹とぼくじゃ、比べるまでもない 勝敗は決しているのも気付かず、期待に胸を膨らませていたなんて 「う・・・・・・っ、ひっく」 ポタッ・・・・・・ポタッ アスファルトの上に、雫が落ちていく 「ほら、ハンカチ。昨日ので悪いけど」 「ん」 にゅっと出てきたハンカチを有り難く受け取って・・・・・・、はい? 「使いすぎて色落ちしたけど、重宝してる。そのハンカチ」 「・・・・・・・・・っ、・・・・・・」 ハンカチを握る手が、震える 三年前の誕生日にプレゼントしたハンカチは、記憶にあるより固い 不思議に思いつつ、広げてみた 薄く、破けた箇所に貼りつけられたアップリケ 高級なブランド品でもないコレを、大切にしてくれているのが分かって 涙が止まらない 「泣くなよ、マコ」 困り果てた声で圭介が、アップリケがまずかったのか? 呟くから、泣きながら噴き出してしまった ぼくは、圭介が好き 許されるなら、可愛い妹の次でいい 遊びでも、都合のいい相手としてでもいいから 「なあ、マコ「圭介」」 「ん? 何」 魅力的な顔で圭介が笑った (チコにバレないように抱いて) 生真面目な圭介に願いを言葉にすれば ぼくに向けられる笑顔が、消えてしまうかもしれない そう思ったら、少しでも時間を引き伸ばしたくなった 「あ、いや・・・・・・、圭介から」 「分かった。俺から言うな」 肩を引いた彼が、真剣な眼差しでぼくを見る 決意してすぐに振られたら、立ち直れない それでも、大好きな人の声を聞きたくて、耳を澄ました 「あのさ、妹泣かしたら絶交っての、撤回出来ねえか?」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

434人が本棚に入れています
本棚に追加