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忘れていた記憶が蘇ってくる
一年前のちょうど今頃、チコと付き合い始めた圭介に言った
「妹を泣かしたら、絶交だぞ」
心にもないことを口にして、傷つき
チコが嬉しそうに笑ったから、癒やされた
「それは困る。大事にするよ」
「嬉しい。圭介」
ぼくの一言で、甘い雰囲気を漂わす二人を見て
30秒前に戻れるなら、ガムテープで自分の口を塞いでやりたいと、本気で願った過去のぼく
そうだ。思い出したからには、言うことは一つ
「うん・・・・・・、撤回する」
「良かった。ありがとう、マコ」
ほっと息を吐き出した圭介が、満面の笑みを浮かべた
・・・・・・嬉しい
過去に「嬉しい」と言って笑ったチコも、今のぼくと同じ気持ちだったのかな
少しだけ、胸が痛んだ
「こらこら、朝から通学路で遭難するんじゃない」
圭介の笑顔に浮き足立ったぼくは、その勢いのまま7Km先の学校へと向かい
残り2Km付近で力尽きていた
ぼーっと道路に座るぼくの横に自転車を止めて、苦笑いしながら片手を伸ばし
「友樹~~~」
立ち上がらせてくれた
「ところで・・・・・・」
「うん。なに?」
「鞄は?」
荷台に座って、友樹の腰に手を回した状態で固まった
カバン?
空っぽの手をぼんやり眺めるぼくを、不憫に思ったのか
「分かった。貸すよ」
「・・・・・・ありがとう」
学校に手ぶらで行くなんて、恥ずかしすぎる
どこでもいいから隠れたい
でも、そんなことすれば、友樹に更なる迷惑をかけてしまう
笑い者になる覚悟を決め、細身だけど、しっかり筋肉のついた腰に手を回した
「落ちないでね」
振り向いた友樹が、ぼくに笑いかける
ありがとう、友樹
「うん!」
大きく頷いて、友人の背にギュッとしがみついた
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