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「まずはお前の名前だ。俺は皇光太郎。光太郎で良い」
「私はミュウ・ジュリースよ。私もミュウって呼んで」
話すのにも名前がなくては不便だ。
ミュウも光太郎に同意し、名乗る。
「あたしは~、君塚静音(きみづかしずね)です~。あたしの事は静音と気軽に呼んで下さい~」
自己紹介をした事で、寝惚けた脳にエンジンが掛かってきたようだ。
「それで~、何の御用でしょう?」
「静音はいつから此処で寝てたんだ?」
「えと、さっきです~。この建物の外で起きて~、とりあえず寝れそうな場所を探してたら、此処で眠くなったので寝てました~」
光太郎に負けず劣らずの図太い神経の持ち主だとミュウは密かに感心した。
普通、こんな得たいの知れぬ場所に放り込まれて冷静でいられる方が珍しい。
まあ、現実味がある訳でもないのでのんびりしている事に何ら不思議はないが。
「あと、此処に来る前に何があったとか覚えてるか?」
「う~ん……バイト帰りだったのは覚えてるんだけど~」
眉間に皺を寄せて、必死に記憶の糸を引っ張るが成果は得られず。
しかしながら、彼女にはこうなった経緯に至る前の出来事が残されている。
バイト帰りという単語から、家に帰れてはいない。
帰宅途中だった記憶の次が、この場になるのだろう。
つまり、光太郎とミュウに欠落している情報を持っている可能性は高かった。
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