不倫の代償

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 しかし少なくとも、こんなことが公になれば、一つの店を構える事業主としての立場にも、何らかの影響が出てくるに違いない。  せっかく自分の手で、店を大きくしてきたのに、それが全て水の泡になる。店は百合子にとって、人生そのものなのだ。店を守るために、彼女は離婚までしているのだから。  和彦は百合子の肩を抱いてやった。    小一時間の沈黙があった。和彦も百合子もそれぞれにいろんな事を考えていた。  百合子がソファから腰を上げたのは、9時少し前だった。 「あたし、やっぱり警察へ行くわ」  意を決したように百合子が言った。そして和彦の顔を見下ろしてさらに言った。 「あたしはあなたの車に乗っていただけだから、大した罪にはならないわ。逃げたのはあなたなんだから」  それを聞いて和彦は顔色を変えた。 「ちょっと待て。それじゃ俺はどうなる」 「知らないわよ。だからあの時、警察に届ければよかったのよ。こんな事で、あたしまで巻き添えを喰うのはごめんだわ」  百合子はそう言うと、バッグを手に取り、入り口に向かって歩き出した。和彦が後ろから、百合子の腕を掴んで引き止めた。 「放して!」 「待て、待ってくれ。もう少し話し合おう。な」 「何を話すの?これ以上話しても何も解決しないわ。警察に行くのが一番よ。こんな不安を抱えたまま一生生きていくなんて、あたしにはできない」  百合子は和彦の腕を振りほどこうとした。  そこで二人は押し問答になった。和彦は百合子の体を突き飛ばした。百合子は勢いあまって、テーブルにぶつかり、 床に落ちた。その時、テーブルの上にあったテレビのリモコンスイッチに手が触れた。  リモコンの電源が押され、テレビがついた。  画面にアナウンサーの顔が映し出された。ニュースをやっていた。  和彦も百合子も、それには目もくれていなかった。
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