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孤独。
月明かりが照らす海面を、異形のクジラが悠々と漂っていた。時折思い出したかのように口を開き、海水を飲み込む。そのクジラの背に生える、唐松の林が揺れた。
ふと、クジラはその澄んだ紅い眼を瞬かせる。月明かりが消えていた。蒼い夜空に、正方形の影が浮かんでいるのを見たクジラは、何も言わず、その身を翻す。
とぷん。
その巨体からは想像できないほど静かに、クジラは水の中に姿を消した。あとに残ったのは、大きな渦巻だけだった。
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