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その言葉をなぜか疑うことはなかった。これはあのビビッドカラーのお菓子なのだ。催眠術にでもかけられたようにすんなりとそう思えた。
辺りを見回す。パウンドケーキみたいな地面。プレッツェルみたいな木にはチョコがコーティングされ、枝葉には薄い抹茶チョコが付いている。空はあかね色‥‥というより、フラミンゴのようなショッキングピンク。
「ここはどこ?」
すると、小人はくすりと笑った。
「なんだか記憶喪失の人みたいですね」
「ここはどこ?ふぇあー、いず、ひあ?」
「私はだれ?ふー、あむ、あい?」
マスコットみたいな小人にからかわれて少女はむっとした。
「うるさい、早く答えなさい」
少女が茶色のえり首をつかんで持ち上げると小人はまたプルプルとふるえた。バイブ機能でもあるんじゃないかと思えた。
「おっかないわー」
「じょうだん通じない人って困るわあ」
「ここは『カッコウ』ですよ」
「カッコウ?」
少女がおうむ返しすると、小人はうなずいて、歌い出した。
「静かなコカンの森のかげから」
「もう起きちゃいかがと、声がする」
「かっこう、かっこう、かっこう、かっこう、かっこう」
それは小学校の音楽でやる曲だ。
「っていうか、『コカン』じゃなくて『こはん』でしょ」
少女がつっこむと、オレンジが股間をおさえてモジモジした。
「さっき飛ばされたとき、キンタマ打ちましたゆえ」
「この痛み、女にはわかりませぬ」
「キンタマーニ湖?」
少女はつとめて笑顔で言った。
「いっそ、去勢してやろうか?」
小人の顔がいっせいに青ざめた。
「ひいいっ!」
「アクマや!」
「わあ。それ、なんてプレイ?」
一人乗り気なのがいた。
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