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赤色がたいまつをかざして叫んだ。
「やつは必ずここにいる!あぶり出せ!」
それは「私が犯人です」と言っているも同じだった。
少女は赤色のえり首をつかんで持ち上げた。
パキパキと、プラスチックトレイを丸めた時のに似た音が森中から聞こえる。
木という木が火柱に変わっていく。
生き物はみな逃げまどい、遅れたものは炎に皮や肉をなめ取られて死んでいく。
森は真っ赤な暴力で煌々と輝いていた。
それを空から見せて、少女は赤色に問うた。
「これはお前の仕業か?」
赤色はボロボロと涙をこぼした。
「だって……、ウサギが……、ウサギが逃げるんだもの……。逃げるんだもの……」
少女は何も言わなかった。ただ、壊れゆく世界を見せた。彼の過ちを見せた。
「ごめんなさい」
そう言って、彼は後悔の涙でぐしゃぐしゃになった顔を少女に向けた。
「どうしよう……?」
消え入りそうな声でーー今にも消えて死んでしまいそうな声で、彼は少女をあおいだ。
少女は言った。
「どうにもできない」
その声も弱々しくふるえていた。
何もできない。助けてやれない。こんなに泣いているのに。こんなに反省しているのに。私に助けを求めているのに!
涙がこぼれてきた。
無力な自分が悔しかった。
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