side タケ

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しばらく無言で雨に降られていた。 お前は本当にマイペースに 何か喋るでもなく煙草を吸う。 時折迷惑そうに俺を見上げて でも帰れとは言わなかった。 転がったままの傘が滑稽で 傘に当たって弾ける雨の音は小気味良い。 雨に酸でも含まれていればいい。 そのまま溶けて消えてしまえ。 雨が降ったら傘を差すという常識など この世からなくなればいい。 こんな風にお前を想ってはいけない常識など 溶けて消えて、なくなればいい。 雨は身体を冷やしたけれど 心は冷えなかった。 隣にお前がいたからだと 俺は思っている。 「っくしゅっ」 ああ。 でもやっぱり、身体は冷えたようだ。 「お前は寒くないの」 尋ねると無言で見上げてきたお前は 何故か困惑したように瞳を揺らしていた。
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