side タケ

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「脱げよ」 家に着くなりそう言われて 途端に俺は思考能力を失った。 無様に後退りして玄関のドアに背中をぶつけて 腰が抜けたみたいにそのままふらりと倒れかけた。 掴まれた腕だけが やたらと熱かった。 無言の舌打ちは心を抉った。 やっぱり俺は、 来るべきじゃなかった。 お前の匂いが充満したこの部屋は 眩暈がする。 立っていられない。 「――何、して」 玄関に座り込んだ俺の服を お前が脱がしにかかるなんて思ってなかったんだ。 「馬鹿が。熱あんじゃねえか」 「嘘だ」 「熱い」 ――熱いのは きっとお前のせい。 「……寒い」 「だから、熱が」 「温めて」 俺がお前を 温めたかったはずなのに。
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