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個人情報、保護を前提としてるあたりが人気の理由だ。ただし、料金を踏み倒そうとする不埒な輩にはこっそり仕入れた個人情報などをちらつかせ、強引に料金を払わせるなど少々、裏家業に近いため表向きには『何でも屋』で通しているというわけだ。ほとんど皮肉に近い。
雇われている職員も、山都を含め、ほとんどがまともな経歴を持たない奴らばかりなのもそのせいだ。
ようするに、危険な仕事や犯罪行為ギリギリの職場でも帰る場所もなければ、家族もいない。下手をすれば刑務所に叩き込まれてもおかしくない、札付きの悪ガキ共をまとめあげて、結成された会社、それが何でも屋である。
山都大聖も、家出中、中卒金髪男(小学生の女の子の家に居候中)が仕事するにはこういった後ろめたい臭いがプンプンする職場しかなかったわけだ。かといって年がら年中、後ろめたい仕事ばかりというわけじゃない。
基本的に依頼を受けているため、真っ当な一般人からの依頼もある。そして、今日の仕事は古い倉庫整理だった。
「これ、全部、処分しちゃうんですか? なんかもったいない気がするですけど」
倉庫の中にため込まれた、骨董品なんかをトラックに運び込む仕事の休憩中、山都は、倉庫の持ち主と話していた。
「まぁ、ここに集めてるのはほとんどが『曰く付きな品』なんだよ。だから、売り払おうにも買い手がつかなくてね。もったいないけど、処分することにしたんだ」
倉庫の持ち主は、初老の白髪混じりの老人だ。曰く付きな品、つまり、事故や事件などの遺品や、怪奇現象を起こした家具などだ。老人は、そういった物には興味がなさそうだが、人は見かけによらないということかもしれない。
「まぁ、ほとんど僕の趣味で集めたんだけどね。なんだかね、こういうのを見てると捨てるのがもったいないって思うんだ」
ホホッと老人は笑いながら遠くを見つめた。本音を言うならいつまでも持っていたいのだが、彼は心臓の病気で近く入院することになり、娘夫婦の提案でいっせい処分することになったらしい。
「オラッ!! 山都っ!! いつまで休んでんだっ!! さっさと働けっ!!」
「うっす!! 了解っす!!」
それじゃと言いかけたが、老人はどこにもいなかった。作業は夕刻まで続き、倉庫がおおかた、片付いたと思ったとき、倉庫の隅っこに小さな箱が置かれていることに山都は気づいた。
「あの、これ、まだ、残ってるみたいっすけど」
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