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効果があるか、わからないけれど。
わたしは大きく息を吸い込み
「誰かー! 助けて下さい!」
思いっきり叫んだ。
近くに人間が居るとは限らないが、何もしないよりはマシだろう。
それに、彼の身体からは、どんどん体温が奪われていく。
これ以上の事は、わたしには出来ない。
だから、賭けのような物だった、けれど。
耳を澄ますと、僅かだが人間の声がこちらに近づいて来ている!
「こっちに……入江に居ます、誰か助けて!」
もう1度そう叫んで、わたしは海へと飛び込んだ。
あの声は、確実に人間たちに届いたはずだ。
後は人間たちに任せよう。
わたしは、海底の住処へと向かって真っ直ぐに泳いだ。
泳ぎながら、考える。
嵐とは言えないけれど、こんな雨の日に、男の子を救うなんて、これじゃ、まるで……。いや、そんなの関係ない。
「わたしは、母さんのような馬鹿な事は考えないわ」
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