第2話 現実は非情である

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 それにしても、何をするにしたところで懸案事項は付き纏う。  第一に言語の問題だ。  母国語である日本語でさえ、かつての世界では極めて特殊な言語であったという。裏を返せば、他国の人々とコミュニケーションを取る場合は絶対と言って良いほどに外国語の習得が必須とされるのだ。  異世界であれば、言うべくもない。というか、日本人に始まった話ではないが。  第二の懸案事項に、種族間差別の有無。  うっかり往来に姿を見せたが最後。石を浴びせられるようではコミュニケーションのきっかけさえ得られまい。  第三に、この世界の住人の気性。  出会い頭に剣で斬り掛かられては堪ったものではない。俺は死にたがりであったが、痛みを求めていたわけではない。  ……と、このように片っ端から列挙すればキリがない。  剣と魔法の世界に夢を追い求める気も解らなくないが、現実的に考えても障壁が多過ぎる。  この悪臭さえ辛いところだが、果たして外界はこの路地裏以上に俺に厳しいかも知れないのだ。 「……辛い」  辛い。  何もかもが敵に思えてならない。  もう精神的に追い込まれ過ぎて吐きそうなくらいだ。これまでの人生とは異なるベクトルで精神が辛い。  ……だが、この世界は更に俺を追い込む腹積もりらしい。  細い路地の向こう。  ひたすら一本道の彼方から迫り来る足音が、俺の退路を決定的に奪い去った。  ……この世界はきっとゲイのサディストだと思う。
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