第2話 現実は非情である

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 足音がどんどん迫ってくる。それも、単独ではなく複数。少なく見積もっても三人。  いつの間に聴覚と認識能力が研ぎ澄まされたのか、思い当たるのは一服盛られたあの時だろうが、今はそんなもの些事でしかない。  異世界人に先行して見つかる事だけはどうしても避けたい。止むなく、ゴミ捨て場の陰を見繕って身を潜める事とした。  ……ちょっと、汁漏れがスゴいんだけど。臭いで吐きそうなんだけど。感覚器の強化って弱点を付け足したような気がしてならないんだが。 「ったく、あのオッサン絶対許さねぇからな……ん?」  元凶であるオッサンに憎悪を燃やしていると、学ランの内ポケットで振動するモノに気付く。  それは、かつての世界の文明の利器。  知恵の実の名を冠した企業が世に出した最強のデバイス【スマホ】である。充電の容量が∞になっていたり、電波の感度が画面外まで突き抜けて伸びていたり、アイコンにツッコミどころ満載なのはどうするべきか考えさせられるが、今は本題に移るべきか。  画面は着信、相手はアドレス帳にない名前を表示していた。 ――――【俺(神)様】と……。  ともあれ、問い質したい話もかなりある。というか文句を言わないとやってられない。  画面をスワイプし、着信を繋いでスマホを耳に当てる。 『……お、出たか。2時間ぶりだなぁオイ』 「なんでいきなりゴミ捨て場なんだよ頭おかしいのかアンタ」 『送り先はあくまで【その世界】だからな。むしろ人ん家の壁にメリ込んだりとかじゃなくて良かっただろ? 酔って手もとグラグラだったけど頑張ったんだぜぇ~?』  そんな状況で異世界に送り出すんじゃねえよ!?  第二の人生が家の壁とか笑い話にもならんぞ!?
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