第1章 一つの終焉

3/7
前へ
/19ページ
次へ
――――――――――――― 「なんだ、予想してたよか随分とケロッとしてんじゃねーか。もうちょい悲観的だと思ったけどよ?」  ふと気がつくと、煙草から煙を燻らせ、隣に座るオッサンが声を掛けてくる。  第一印象として、馴れ馴れしいことこの上ない。おまけにヤニ臭い。かなりの悪印象だ。なかなか狙えるものじゃない。 「煙草を吸えば誰だってこうなんだよ。臭いの事は慣れろ。ついでに俺の人柄も慣れとけ。直ぐに別れちまう、呆気ねぇ縁だとしてもな?」 「そんな都合良く……、……え?」 「え?」  都合良く悪印象を受け入れられるか。  そう述べる前に、言い知れない疑問が立ち塞がった。 「オッサン、俺はまだ何も言ってなかったよな?」 「でも、思ったろ?それだけで俺は十分なの。人間の霊魂風情、考えなんぞ手にとるようなもんよ」  掠れるようなせせら笑いを溢しつつ、オッサンはグラスに注がれた琥珀色の液体を喉に流し込む。 「……つまり、オッサンは死後の世界の神様とか、そういうのか?」 「いんや、そいつぁちっとばかしファンタジーが混ざってんな。お前も結構メルヘン脳なのな」  うるせえ黙れ。 「そうキレんなよ。現代っ子かっての」  俺自身はバリバリの現代っ子だし、何より態度と臭いが気に入らない。 
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加