1人が本棚に入れています
本棚に追加
「へいへい。……じゃ、よく聞いとけよ?」
空になったグラスにはいつの間にか再び琥珀色の液体が注がれ、それに口を付けつつオッサンは切り出す。
「俺はよ、自分の命が惜しくねぇような馬鹿を探してた。ちょいと野暮用を頼まれて貰うためにな?まぁ、平たく言えばお使いってトコだ」
「野暮用、お使い……だと?」
「そう、ちっとばかし余所の世界を救って貰いたくてな?俺が関与したらそれだけでイロイロ狂っちまうからよ」
このオッサンは馬鹿なんだなと確信した。
「ガキの使いで済むレベルか。だいたい、余所の世界とか無理に決まってんだろ。外国に放られても二日で死ぬ自信があるぞ」
日本から外は言葉と文化に大きな壁が隔たる異世界。
文字通りの異世界にもなれば、大気が合わなくて窒息する自信がある。
「……誰も簡単に死ぬようにするわけねぇだろ。死んでも恨み言を言わねぇヤツを選んだつもりだけどよ……。それに、行き先はお前等くらいのガキにゃ丁度憧れるようなトコだぜ?」
「……参考までに、聞いとく」
「科学の代わりに魔法が発展してて、人間以外にもイロイロ居て、剣とか持ってても大丈夫な世界。剣と魔法で戦えるな!」
やっぱり、このオッサンは馬鹿だった。
「それ、言い換えたら武装が許可されてて傷害事件が発生しやすく、武装していなくても魔法という危険性を考慮しないといけなくて、更に人種が多くてトラブルに巻き込まれやすいって事だよな?」
「……もうちょい夢を持とうぜ?」
夢なんか持てるかよ。
そんなの、あるだけ苦しむだけだろ。
最初のコメントを投稿しよう!