第1章 一つの終焉

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「へいへい。……じゃ、よく聞いとけよ?」 空になったグラスにはいつの間にか再び琥珀色の液体が注がれ、それに口を付けつつオッサンは切り出す。 「俺はよ、自分の命が惜しくねぇような馬鹿を探してた。ちょいと野暮用を頼まれて貰うためにな?まぁ、平たく言えばお使いってトコだ」 「野暮用、お使い……だと?」 「そう、ちっとばかし余所の世界を救って貰いたくてな?俺が関与したらそれだけでイロイロ狂っちまうからよ」  このオッサンは馬鹿なんだなと確信した。 「ガキの使いで済むレベルか。だいたい、余所の世界とか無理に決まってんだろ。外国に放られても二日で死ぬ自信があるぞ」  日本から外は言葉と文化に大きな壁が隔たる異世界。  文字通りの異世界にもなれば、大気が合わなくて窒息する自信がある。 「……誰も簡単に死ぬようにするわけねぇだろ。死んでも恨み言を言わねぇヤツを選んだつもりだけどよ……。それに、行き先はお前等くらいのガキにゃ丁度憧れるようなトコだぜ?」 「……参考までに、聞いとく」 「科学の代わりに魔法が発展してて、人間以外にもイロイロ居て、剣とか持ってても大丈夫な世界。剣と魔法で戦えるな!」  やっぱり、このオッサンは馬鹿だった。 「それ、言い換えたら武装が許可されてて傷害事件が発生しやすく、武装していなくても魔法という危険性を考慮しないといけなくて、更に人種が多くてトラブルに巻き込まれやすいって事だよな?」 「……もうちょい夢を持とうぜ?」  夢なんか持てるかよ。  そんなの、あるだけ苦しむだけだろ。
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