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立ち上がった私は、歩羽に怒声を浴びせて。
傍にあった物を手当たり次第投げ付けた。
頭を抱えて嗚咽を響かせるその声は、耳には届いていなかった。
「ガキなんか殺せ!!
産んだって育てられねえだろ!!」
「ぅ…ひっ…いや…だ…ッ」
「嫌だ…?
は?ウチよりガキを選ぶの…?
何で?
ウチら親友でしょ…?
ねえ…あゆ…?」
顔を上げた歩羽は、メイクが落ちて黒ずんだ瞳を私に向けた。
悲しみと、苦しみと、殺意を混ぜあわせた瞳だった。
「…その親友が不安なのに…助けてもくれない
殺せまで言った
それが親友ならお前とはもう関わらない!!
二度とウチの前に現れんな!!!」
きっともう頭の中は乱れている。
私が投げた物を投げ返す歩羽には、何も言えなかった。
家を追い出されてから歩道橋の上で1人、行き交う車を見下ろしていた。
風はどんどん強まり、息苦しささえ覚える。
目の前を抜けていく光は、エンジンの騒音と共に後ろへ流れていった。
「……死ね」
たったそれだけの独り言。
誰対して言ったのかも、自分に言ったのかも分からない。
ただただ、虚しさだけが胸の中に広がっていく。
そんな時。
4人組の男子高校生が、遠くで私を指差した。
何かを仲間内で話し合い 笑顔を貼り付けてここに向かってくる。
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