私の存在証明

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分厚い雲が空を覆っていた。 醜い鈍色が一面を染めている。 鼻先で感じた雨の匂い。 今日は一日、この空に見下ろされるのだろうか。 顎を上げてぼんやりそんな事を思う。 湿気が混じった生温い風が体を掠めていった。 「くるみー 今日の夕方から台風くるってー」 古びた校舎を背景に、グランドの中を駆け回る生徒達。 水飲み場の下に座っていた私は、後ろからやって来た1人の女生徒に振り返り、笑顔を向けた。 「やっぱし? いやーな風だと思ったんだよねぇ」 「それなー 髪うねるから萎えまくり」 学校指定のジャージをダラシなく着崩した私達2人は、体育の授業に参加せず、その場所で他愛のない話をした。 目の前で真面目にサッカーの試合をするクラスメイトを嘲笑しながら。 「サッカーとかやってらんねえし」 「うっわ スライディングしちゃってるよ キモいー!」 「あははは!!」
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