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「田中さーん!
もう帰んのー?」
放課後を迎え、帰宅し始める生徒の間を縫って、気弱な顔をする女の子に近寄った。
ダッサイ眼鏡にそばかすだらけの顔。
一度も整えたことのない太い眉は見ていて気分が悪い。
一応女なら身形に気を使えよ。
「そんな急いでいるってことは…
も、ももももしかして、おデートですか!?」
「マッジ!?
彼氏出来たの!?」
「ち、ちが…」
「今日こそ処女喪失!?いやーん!」
「あっはっはっはは!!!」
ロクに返事も聞かず、勝手な会話を繰り広げる私と歩羽。
身支度をしていた生徒達が顔を曇らせている。
でも誰1人助けようとはしない。
いや、出来ないんだ。
皆臆病だから。
邪魔者が居ないことを良いことに、意気揚々と女子生徒を虐めていると。
机を蹴り飛ばす耳障りな音が教室全体に響き渡った。
思わず肩を竦めて、後ろを振り返る。
そこには机を蹴り飛ばしたであろう男が私達を睨み付けていた。
「…何だよ、隆次(たかつぐ)」
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