第一章・ーのぞいたー

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 立ち上がり、思い切ってふすまを全開にする。  そこに闇はなく、代わりに横たわる者。  目は落ち窪み、皮膚はところどころ破れ、そこから骨が覗き白い骨を見せている。  髪は長く目鼻立ちの整った可愛らしい顔で、ピンクのブラウスに紺色のスカートを履いている少女が横たわる。  ははは。ははっ。  ふすまが開いている理由? 閉めても閉めても開いたままになる理由。  もうここに連れてきて、どれくらいになるのかなぁ。  ここには私しかいないのに、何を必死になって、誰に助けを求めているのやら。  ねぇ? そんなにその世界は狭かったかな? 望むものは全てあげたのに、裏切った報いは受けてもらわないと、私が可哀想だから。  歴史的日本家屋って、趣はあるけど不便で仕方ないなぁ。  小袖……、か細い腕を無理やり下ろし、再びふすまをしっかり閉める。  ーーこれでもう、二度とこのふすまが開く事はない。
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