銀月の夜

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   だから…… 「負けて、たまるかっ!」  オレは盾の上から短刀の柄で殴って思い切り衝撃を加えた。  オルテシアの体がわずかに後退する。  ここで一撃もらっても構わなかった。さらに歩を進めてオルテシアに迫る。  立ち位置を入れ替えながら、呼吸も忘れて逆手に持った刃を繰り出し続ける。  短刀と盾がぶつかり続け火花を立てる。  オレの目は、わずかな隙間を捉えた。盾の動きの中のただ一点に綻びがあることを見逃さなかった。  短刀を逆手から持ち変えると、その一点へ風を裂いて突き出した。  オルテシアの顔が驚愕に変わる。 「ほう! 私の盾を掻い潜ってきたか!」  だが、浅かった。  オレが手にした絶好の機会は、頬の薄皮を一枚だけ裂くという結果しか得ることができなかった。  オルテシアの頬から、一筋の血が垂れる。 「見事なり! 面白い、面白いぞ少年。最近はじいの槍すらも捌いてみせる程になったのだがな。世界は広いということだ」  興奮したようにオルテシアが満面の笑みを浮かべる。  
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