銀月の夜

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  『銀の騎士オルテシア=エル=オルトランを暗殺せよ』  それがオレに与えられた命令だった。  調べによれば、オルテシアとは現在躍進を続けるBランクパーティの勇者であるらしい。FからSまであるランクの中でのBだ。十分に高ランクであるといえるだろう。  数百人に一人の割合で生まれる『勇者の資質』を持つ者。  その内北方に広がる魔界に君臨する王、即ち魔王を討伐する意思を示した者だけが正式に『勇者』となる。  勇者を暗殺するということは人間界全体で見れば大きな損失になる。  だが、オレにとっては依頼主の思惑なんてのはどうでもいいことだ。 「オレはただ、依頼をそのまま遂行するだけさ」  オレの名前はシグルイ=ユラハ。しがない雇われ仕事人だ。  暗闇に紛れ、街を進んでいく。静かな夜だった。通りは人一人歩いていない。  目立つわけにはいかないオレには好都合だ。  すぐにオルテシアが泊まっているという宿に着いた。Bランクのパーティなのだから金はあるはずなのに、泊まっているのは妙にボロッちい宿だ。 「ケチなのか、それとも単に金がないのか。どっちにしろ底が知れるぜ」  
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