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オレはゆっくりと短刀を振り上げる。
「悪いな。これも仕事なんだよ」
小声で呟き、短刀を一気に振り下ろし――
刃は敷布団を貫通し、ベッドに直接突き刺さった。
「!? バカな!」
オレは確かにオルテシアの急所に短刀を振り下ろしたはずだった。
だが結果はどうだ。そこにオルテシアの姿はなく、空のベッドだけが残されている。
「ふ、ふふふふふ……!」
背後から小さな笑い声が聞こえオレはとっさに身構えた。
窓の傍に長身の女性が佇んでいた。月の光に照らされ、長い銀色の髪が輝いて見える。
その美しさに、オレは思わず一瞬見とれてしまった。
「お前は昼に私たちを尾行していた少年だろう。ここに来ることはわかっていたぞ」
女性――オルテシアが透き通った声を発した。
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