銀月の夜

9/19
前へ
/196ページ
次へ
  「くそっ……!」  まっとうに生きている奴にオレが負けるはずがないと、そう考えていた。  地獄の底も知らないような奴にオレが負けるはずがないと、そう考えていた。  心のどこかで妬みを感じていたのかもしれない。そのせいで思考が狂ってしまっていたとしたら。  戦う前からオレは負けていたということだ。  認めるか。  認めるか、そんな事実……! ぬくぬくと育った奴なんかに負けてたまるか! オレの存在理由を……消されてたまるかっ!  戦うためだけに生きてきた。  捨て子を集めて暗殺者に仕立て上げる組織でオレは育った。  組織が資金難になりあっさり見捨てられてからは、雇われの仕事人として生きてきた。  汚い仕事に何度も手を染めてきた。死にかけたことも数え切れない。  勝たなければ誰も認めてはくれなかった。  勝たなければ、オレがここにいることを証明することができなかった。  
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4116人が本棚に入れています
本棚に追加