91人が本棚に入れています
本棚に追加
/488ページ
クラードたちも分かっているだろう。彼女はビージーグであり王家の秘密を握る者であり、果実の娘だ。敵対することは得策ではない。ならば内に取り込んでおく方が利口だ。
ノーウェン家も建国以来王家に仕える忠臣の一族だ。今回発覚した結界を支える宝剣を受け継ぐ一族でもある。砂雪を守るのに申し分ない身分だろう。
ディーリスは自分がノーウェン家の当主で良かったとこの時ほど切実に思ったことはない。
心配なのは王家に置こうとする動きが現れかねないことだが、そこはあらゆる手段を使ってでも阻止させてもらおうとディーリスは思っている。
仕事が恋人とまで言われていた彼だ。幸い机仕事は得意分野だ。必要と思われる根回しもお預け期間に取り掛かっている。
「契約のことで君に期待などしてないと僕は言ったね。それでもあの時ディーリス君にあの子を守れるかと問うたのはこれからがあるからなんだ。」
ビユセルの体調が回復するまでコル・フォルトは森へいったん戻った。帰る前に彼はディーリスに真っ直ぐな視線を向けた。
あの時というのは死者の森で二人が初めて会った時の事だろう。
最初のコメントを投稿しよう!