バスの後列から2番目、窓側の君

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「……そうだね。……無理だよね」 良かった。 好きになってなくて、良かった。 ……さすがに好きな人にこんな風にフラれていたら、私はきっと立ち直れない。   彼は「付き合うのは、なかった事にしよう」なんて意味不明な事を口にして、そのまま発作を起こした私を置き去りにして去って行った。 翌日学校へ行くと、本当に彼は私とは目を合わさずに、昨日まで付き合っていた事がなかったかのような態度を取った。 そのとき、恋なんてそんなものなんだって知ったんだ。 好きなんて、口ではいくらでも言える。 そこに心が込められていなくても。 それに私だって、好きになっていないのに付き合う事を了承したんだから。 不思議と、涙は出なかった。 悔しいと思う事も、なかった。   ただ、わかっただけ。 傷つきたくないなら、恋はしない。 最初から何もかも、諦めた方が楽だから。 病気の事を理解してほしい人に出会ったとしても、理解してくれる人には出会えない。 全て最初からわかっていれば、誰も傷つけなくて済むし自分も傷つかないで済む。 だから私は、恋はしない。 何も望まない。 この先も、きっと、ずっと。
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