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眠気はまだ、訪れない。
一緒に飲んだアルコールのせいか、少し酔っ払ったようだ。
遺書でも書こうか?
いや、書いたとこで何になる?
いったい誰が読むっていうんだ?
妻も、娘も、もういないじゃないか。
仕事だって、もう失ったじゃないか。
失うものは、もう私の命しかないじゃないか。
男は、テレビをつける。
深夜のテレビには、いつの時代に撮影されたかも分からない、古い映画が上映されていた。
それは、あるサラリーマンの日常を舞台とした話。順風満帆だった生活が、詐欺のせいで簡単に崩れていく。幸せな家庭は崩壊し、やがて主人公は落ちぶれていく。
まるで、私の人生が映画になって上映されているようだった。
あぁ、これは、私じゃないか。
カーテンが揺れ、本棚の上に置いてある写真立てに引っ掛かる。
写真の真ん中には私。右側には妻。その妻に抱かれ、幸せな笑顔を浮かべる娘。
もう、見れないのかと、思うと、涙が、溢れ、、
あれ?
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