Act.2 零了

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「これからも、似たようなことがあるかもしれん」 「……」  真剣な表情をした彼の肩を、無理矢理手当てしながら、そうか、とだけ呟いて。 「でも、オレが殺させん」 「……」  まるで自分に言い聞かせるような声に、ちくり、と胸の奥の方が痛む。 「……オレを助けるため言うて、お前が傷つくんも嫌なんやけど」 「……なんで」 「なんでて……」  真顔で問い返されて返答に困りながら、どう伝えたものかと考え込む。 「オレはお前が無事やったらそれでえぇ」 「…………」  やけにキッパリと呟く潔さに、半ば呆れながら。 「……なんでそうまでしてくれるん? たかが飴1個やん」  洋樹を殺していくら受け取ったのかは知らないが、恐らくあめ玉なんて何個でも買える金額をもらっただろうに。  金のためと言い切った男がどうして、と呻くように呟いたら。ちらり、とこちらを見てきた彼が、ことさらな無表情で呟いた。 「--------うれしかった」 「ぇ?」 「あめも……大丈夫? も」 「……」 「うち来る? も」 「ぁ……」 「うれしかった」  ぽつりと呟かれた彼の言葉が、じわじわと胸に浸みていく。  あんなにも幼い頃から、こんなことをしていたのだから、おそらくは彼も食うに困りでもした親に捨てられたか、売り飛ばされたかしたのだろう。  孤独だった彼を、あの言葉が少しでも癒してくれていたのなら、ほんの少し救われた気がして。 「そうか……」 「……」 「ほなら、うち来るか?」 「------------へ?」  呟いた台詞に。  彼が初めて。  無表情を転げ落として、晒した間抜け面が。  おかしくて可愛くて、嬉しくて。----笑ってしまった。 「うちに、おいで」
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