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「これからも、似たようなことがあるかもしれん」
「……」
真剣な表情をした彼の肩を、無理矢理手当てしながら、そうか、とだけ呟いて。
「でも、オレが殺させん」
「……」
まるで自分に言い聞かせるような声に、ちくり、と胸の奥の方が痛む。
「……オレを助けるため言うて、お前が傷つくんも嫌なんやけど」
「……なんで」
「なんでて……」
真顔で問い返されて返答に困りながら、どう伝えたものかと考え込む。
「オレはお前が無事やったらそれでえぇ」
「…………」
やけにキッパリと呟く潔さに、半ば呆れながら。
「……なんでそうまでしてくれるん? たかが飴1個やん」
洋樹を殺していくら受け取ったのかは知らないが、恐らくあめ玉なんて何個でも買える金額をもらっただろうに。
金のためと言い切った男がどうして、と呻くように呟いたら。ちらり、とこちらを見てきた彼が、ことさらな無表情で呟いた。
「--------うれしかった」
「ぇ?」
「あめも……大丈夫? も」
「……」
「うち来る? も」
「ぁ……」
「うれしかった」
ぽつりと呟かれた彼の言葉が、じわじわと胸に浸みていく。
あんなにも幼い頃から、こんなことをしていたのだから、おそらくは彼も食うに困りでもした親に捨てられたか、売り飛ばされたかしたのだろう。
孤独だった彼を、あの言葉が少しでも癒してくれていたのなら、ほんの少し救われた気がして。
「そうか……」
「……」
「ほなら、うち来るか?」
「------------へ?」
呟いた台詞に。
彼が初めて。
無表情を転げ落として、晒した間抜け面が。
おかしくて可愛くて、嬉しくて。----笑ってしまった。
「うちに、おいで」
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