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「----ほんで結局、オレも殺すんか」
悔しいのか、怒りなのか、恐怖なのか。
声を震わせながらもオレを睨み付ける彼の言葉を、否定も肯定もせずに。
「----オレは」
「……なんや」
「お前に撃たれた」
「--------ぇ?」
「反撃されて、仕方なく引いた」
「……な、に……?」
訳が分からないという顔をする彼に、ニヤリと笑って見せたら。
銃口を、自分の左肩に向けた。
「----っ、ちょっ、待て!」
慌てる彼が、おかしい。
パン、という軽い音と衝撃の後で、熱が左肩に集まって、ドクリドクリと2つ目の心臓が出来る。
ポタリ、と落ちた赤い雫を見た彼が、呆然としながらも痛そうな顔をするのを笑って。
「----じゃあな」
痛みは、感じないように訓練されている。
銃をホルダーにしまったら、左肩はすぐに止血。
去り際に彼の声が聞こえて、そのセリフのお人好しさを、笑うしかなかった。
「----------------あり、が、と……」
『オレはお前に撃たれた』
無表情な彼は、そう言って自分自身に向けて引き金を引いた。
何が起きたのか全く理解できなかったけれど。
朱色の雫を零して、バタバタと走り去った彼が、自分を助けてくれたのかもしれないと。
気づいた瞬間に声が零れていた。
「 ----------------あり、が、と…… 」
バカバカしいかもしれない。
家はめちゃくちゃ。洋樹だって殺されて、自分も左足に傷を負ったのに。
金のために洋樹を殺したと、言い切った男に、礼を言うなんて。
それでも、彼が自分を助けてくれたことには、変わりないのだ。
彼の足音が遠ざかるに従って、足の震えが酷くなって。
ずぶずぶと床にへたり込んで、ようやく左足の痛みを自覚する。
そして何より。
「ひろき……」
血溜まりを思い出して、這うようにして洋樹の元へ。
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