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「……なんで」
「?」
「なんで……助けてくれたん? 今日も……こないだも」
そんな風に彼に問いただせば。
一瞬言葉に詰まった彼が、あからさまにそっぽを向いた。
「……この間、オレが失敗したと言ったから、他の人間が……お前を殺すために、送り込まれた。……だから、止めにきた」
「……なんで、止めにきたん?」
「…………----お前には、恩があるから」
「……恩?」
まだそっぽ向いたままの彼が、ぶつぶつと呟く。
その横顔に見覚えがあるような気がして、じっと見つめた。
『----ありがとう』
頬張ったあめ玉で頬を膨らませた、綺麗な顔の少年が不意に頭をよぎって。
「----あれ?」
「……お前に、昔……死にかけてたとこを、助けられたことがある」
「……ぇ?」
「まだ仕事も半人前の頃。一人ではぐれて……腹減って。でも、金もないどうしようもないオレに、お前が飴、くれたんや」
「……ぁ……」
小さな体で、必死になって。けれど途方に暮れた瞳が、うろうろと周囲を彷徨うのを見つけて、駆け寄ったのだ。
『はい、あーんして』
『ぇ?』
『あーん』
驚きに目を見張るのを無視して、ポケットから取り出した飴を、彼の口に放り込んで。
『おいしい?』
『……ぁ……』
『大丈夫? 一人? 迷子?』
『ぇ……ぁ……』
『うち来る?』
『……っ』
ふるふる、と首を横に振った少年が、ありがとう、と笑ってくれたのは一瞬。
パタパタと走っていった小さな背中を思い出して、目の前の彼を見つめる。
「……あの日、お前がオレに食ってかかってきた時に、思い出した。あめもろた」
「……」
「だからお前は殺さんし、殺させへん」
「----っはは」
くくくっ、と。思わず笑ってしまった。
金のために洋樹を殺した男が、飴の恩でオレを助けてくれるという。
複雑な想いの中で、無表情のままキョトンとする彼を見つめて。
「ありがとう言うたもんか迷うけど……助けてくれてありがとう」
そう笑って見せたら、彼の無表情がまた、一瞬だけ笑った気がした。
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