27人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
オレを殺すために寄越されたという男を、彼が森の奥へと担いでいった後。オレはまた、あの時と同じようにその場を清めた。
意味はないのかもしれないと思いながらも、その場で祈りを捧げ----そして、懺悔した。
彼を、責めきれずにいる自分を。
神に、そして、----洋樹に。
洋樹を殺されたことを憎いと思い、そして悔しく哀しく思っていることも事実なのに。
幼い頃のあめ玉の恩を、律儀に覚えていて、そして今になってオレを守ってくれるという彼を、どうしても恨みきれないのだ。
(ごめんな、洋樹……)
胸に下げている十字架は、オレが祈りの詞を覚えた時に、洋樹からもらったものだ。
今は少しだけ重いそれに、触れられないままで、そっとその場を離れた。
最初のコメントを投稿しよう!