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真夜中。
ふと目が覚めて、ぼんやりとしていた時のこと。
遠くから人の声が聞こえた気がして、もそもそと体を起こした。
しょぼつく目をこすりながら耳をすませば、この教会の神父を務め、自分の親代わりでもある洋樹が話す声のようで。
こんな真夜中に何事かと部屋を出て、声のする方へ、ほてほてと歩く。
声はどうやら、洋樹が寝起きする部屋からのようだと気付いてドアの前へ。
「----やめろ!」
ドアを開こうと、ドアノブに手を伸ばした時だ。
切羽詰まった洋樹の声に被さるように、バンッと大きな音がして、ドアに穴が開いた。
突然のことにギクリとして、その場に立ち止まる。
「来るな、悠!」
聞いたこともないような、焦った声。
「何……?」
どないしたん? と。
小さな声で聞けば。
来るな、と繰り返されて。----挙げ句
「----逃げろ! 悠!!」
聞いたこともないような怒鳴り声に、体が震えた。
ドアノブに手を伸ばそうとしていた手が、震えて空中で止まる。
----直後。
パン、と。
軽い音がして。
ドサリ、と重たいものが落ちる音がした。
「…………ひろ、き?」
呼ぶ声が震えた。
よろめいて、壁に肩を打ち付けながらも、手を、ドアノブに向けようとしたら。
カチャリ、と。
ドアが開いて。
「っ、ひろ……っ!?」
出てきたのは、驚くほど整った----冷たい表情をした同い年くらいの男で。
その手に握った銃を、こちらに向けていた。
「だ……れ……」
静かな威圧感に、身がすくむ。
よろめくみたいに後ずさったら、男の足の間から覗いた部屋の中。
真っ赤な血溜まりが見えた。
「------------洋樹!!」
洋樹に向かって駆け出そうとしたオレの足元に、銃弾が飛んできて。
立ち竦むオレを、無表情に見つめていた男が。
もう一度オレに、銃口を向けた。
「お前は、入ってない」
「……入ってない?」
「でも、見られたから、殺す」
「な、に……」
言ってんねん、と。
掠れた声で呻きながら、男を見つめる。
体も、声も、震えていた。
鼓動は、バクバクと煩く鳴っている。
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