Act.1 飛電

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 真夜中。  ふと目が覚めて、ぼんやりとしていた時のこと。  遠くから人の声が聞こえた気がして、もそもそと体を起こした。  しょぼつく目をこすりながら耳をすませば、この教会の神父を務め、自分の親代わりでもある洋樹が話す声のようで。  こんな真夜中に何事かと部屋を出て、声のする方へ、ほてほてと歩く。  声はどうやら、洋樹が寝起きする部屋からのようだと気付いてドアの前へ。 「----やめろ!」  ドアを開こうと、ドアノブに手を伸ばした時だ。  切羽詰まった洋樹の声に被さるように、バンッと大きな音がして、ドアに穴が開いた。  突然のことにギクリとして、その場に立ち止まる。 「来るな、悠!」  聞いたこともないような、焦った声。 「何……?」  どないしたん? と。  小さな声で聞けば。  来るな、と繰り返されて。----挙げ句 「----逃げろ! 悠!!」  聞いたこともないような怒鳴り声に、体が震えた。  ドアノブに手を伸ばそうとしていた手が、震えて空中で止まる。  ----直後。  パン、と。  軽い音がして。  ドサリ、と重たいものが落ちる音がした。 「…………ひろ、き?」  呼ぶ声が震えた。  よろめいて、壁に肩を打ち付けながらも、手を、ドアノブに向けようとしたら。  カチャリ、と。  ドアが開いて。 「っ、ひろ……っ!?」  出てきたのは、驚くほど整った----冷たい表情をした同い年くらいの男で。  その手に握った銃を、こちらに向けていた。 「だ……れ……」  静かな威圧感に、身がすくむ。  よろめくみたいに後ずさったら、男の足の間から覗いた部屋の中。  真っ赤な血溜まりが見えた。 「------------洋樹!!」  洋樹に向かって駆け出そうとしたオレの足元に、銃弾が飛んできて。  立ち竦むオレを、無表情に見つめていた男が。  もう一度オレに、銃口を向けた。 「お前は、入ってない」 「……入ってない?」 「でも、見られたから、殺す」 「な、に……」  言ってんねん、と。  掠れた声で呻きながら、男を見つめる。  体も、声も、震えていた。  鼓動は、バクバクと煩く鳴っている。
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