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嬉しそうに千宮は微笑み、
貴子の頬に大きな手をかざす。
「僕は何時までも待っているから・・」
千宮の手の暖かさにホッと息をつきながらも
心の中を渦巻く罪悪感・・・
『そんな資格・・・私に・・・
私は、彼を裏切って・・・』
そんな貴子の心を呼んだかのように
いいんだ、と千宮は最後に
惜しむように貴子を力強く引き寄せ、抱き締める。
「僕は今、幸せだから・・・
君を、君との未来を描けることだけで
今は胸がいっぱいになるほど、僕は幸せだから。
だから、持っていて。」
僕のために、と微笑まれると
貴子はもう何も言えなくて・・・
千宮はとてもとても名残惜しそうに
貴子に手を振って、タクシーで去って行った。
そのタクシーが消えても
貴子はその場所で胸にチケットを抱え
立ち尽くしていた。
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