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だから、溢れる涙を隠すように顔を反らし、
何度も何度も謝る。
その言葉しか出てこない。
違うんだ、と千宮はゆっくり近づいて
貴子の肩にそっと置く。
「そんなつもりじゃなかったんだ。
・・・謝ってもらう事なんて、何もないんだ。」
でも、と泣き顔を両手で隠す貴子に千宮は微笑む。
「ごめん。泣かせるつもりはなかったんだ。
・・・ここに来れば、君に逢おうとすれば
きっと傷つける、そう分ってたのに・・・
でも、知ってしまって・・・
迷いながら日本まで来て・・・。
君のいる日本に足を踏み入れてしまったら
君の居場所を知ってしまったら・・・
どうしても、我慢できなかったんだ。」
ごめん、と再び謝る千宮に
貴子はフルフルと首を横に振る。
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